夜の病院で
2009年 02月 21日
手術のミッションの最終日の夜11時頃、私は真っ暗になった病院を後にしようと、病院の出口にさしかかった。
その時、ニ人の人影が私の前に現れた。
一人は顔が火傷で解け胸と顔が引っ付いてしまっていた18歳の女性。
1年以上にわたって手術を繰り返し、もう一息で正常に近い状態に戻るところまで来ている。
もう一人は生まれつき右腕が巨大な脂肪増殖でで肩の部分から逆の腕の3倍以上に大きく太くなり、3本の指は20倍以上に巨大化してしまっていた16歳の少女。
3度も手術を繰り返し、ようやくシャツに腕が通るようになった。巨大化した指は、切断しもう隠すこともなくなった。
この二人が私の元に跪き、何度も拝み始めた。
ミャンマーでは心からの感謝を示すときにとる姿勢である。
最初の頃は、私も何となく違和感を感じたが今は慣れてしまった。
感謝など無用の私であるが、彼らの今の心の状態を知るにはいい機会だと思っている。
全く神が創ったようにはいかないまでも、少しは普通に近づいて、それを彼らがどの程度満足しているかを知りたい。
それで彼らが隠れたり、卑屈になったりして生きていかないでよければ、それがひとつの治療のゴールの目安になる。
患者の本心を知る。患者本人も知らない心の声を聞く。
医者の欲求でもう少し完成させたいが、二人ともこのあたりで結構ですと言っていた。
吉岡ー大村ー安井ー神白と4代1年半の間、医者が順番に治療をつなぎ、ようやくそこまで来た。
ここに短期的関わりではできない医療を実現している。