特定非営利活動法人ジャパンハート ファウンダー・最高顧問。1995年より国際協力医療活動をはじめ、ミャンマー・カンボジアなどで、これまで1万人以上の子どもたちに手術を行ってきた。


by japanheart
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割り切れない思い

割り切れない思い

 現地で治療していて、本当に心から患者たちを治したいと思っていても、どうしてもうまくいかないときがある。かえって悪くしてしまう時もある。
 麻酔や手術後の感染や合併症などで、時に患者が本当に悪くなるときがある。

 何をしているのだろうか?
 1000人助かっても、1人死んでいたならば、何のための治療かと思う。

 現地の医者たちがやればもっと成績が悪いのかもしれない。
 しかしそれはわれわれには関係ない。
 われわれがどうあるべきかだけが問題になる。

 そういえば、あるNGOの代表が、実際の医療をすると、患者が死ぬリスクがある、それを現地の人たちは迷惑に感じるのではないか?だから保健活動のほうが、リスクがないのではないか、言っていた。
 私に言わせれば、保健活動は、自分との因果関係がはっきりせず、直接、人の生き死にもわからない、からあいまいになってしまうだけで、本当は人命に対して大きなリスクがあると私は思っているが、その人にはそのリスクが見えないだけなのだろう。

 本当に忙しく、睡眠時間も削ってはたいているので、仕事中に眠ってしまうスタッフもいる。
 それも本当に仕方ないことなのかどうか?

 求められるままに治療を行い、求められるままに患者たちのために働く。

 しかし、わずかにミスを犯す。
 あらゆるスタッフの緩みが、細い流れのように集まって、集まって、大きな流れになるように、やがて結果となって現れ、人が傷ついてゆく。

 私は、割り切れない思いで一杯なのだ。

 人を傷つけようと思って、傷つけた場合は、心はそんなに痛まない。
しかし、本気で人を癒そうと思って、その結果、傷つけた、そのとき、本当に心の芯から自分も傷ついているのがわかる。

 

 

 
by japanheart | 2008-08-20 10:05 | いのちの重み