運命というもの
2008年 03月 31日
人には運命というものがあるのだが、、、。
2年前、全身に腫瑠が無数にできた女の人が来た。
外国人の名前がついた病気で、いわゆる”エレファント・マン”で有名な遺伝の病気だ。
顔が変形し、体は大きなイボだらけ。まさに顔は変形し、象のようになっていた。
この人はどうしてこのような人生を背負わねばならないのか?と見ている人間が辛くなるほどだ。
顔を隠し、30年も生きてきた。それだけで辛い。
この土地では、学問をして見返してやるというような選択肢もなく、母と2人、つつましく生きてきた。
いつものように、顔の変形を治す手術に挑戦し、数ヵ月後、彼女の顔からいつもそれを覆い隠してきた布切れは取り去られた。
それからしばらくは今までの人生よりも少しだけ幸せそうに見えた。
彼女は明らかに明るくなった。
2年前のことだ。
その彼女が今回、立てなくなったといってやってきた。
足が痛い。手が腫れる。
私に何ができるだろうか?
彼女は乳がんだった。転移もしている。足が痛いのは、転移で骨が溶けているからだ。
実は、1年少し前、彼女が外来で胸にしこりがあることを私達に告げていた。
しかし、私は無視を決め込んだ。
その頃、そのしこりはもう十分大きかった。数センチはあった。
もし乳がんだったら、日本であらゆる治療をしても厳しい大きさだろう。
だから敢えて見逃した。
彼女にはお金はない。苦しい抗がん剤治療や胸を全部取るような手術をしても望みはあまりないのだ。
そのまま、自然に見送りたいと思った。
そして今、予定どうり私の前に彼女はいる。
私は何もできずに、痛み止めと笑顔を振りまくだけの状態だ。
私は神ではなく、その選択が正しかったか、そうでなかったか分からない。
ベッドサイドでその少しゆがんだ顔から時々私に見せる笑顔が、とても素敵で、私の心に突き刺さる。