特定非営利活動法人ジャパンハート ファウンダー・最高顧問。1995年より国際協力医療活動をはじめ、ミャンマー・カンボジアなどで、これまで1万人以上の子どもたちに手術を行ってきた。


by japanheart
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患者が患者を連れてくる

患者が患者を連れてくる

 どこの病院でもそうかもしれないが、どうしても外科をやっているとその多くは命には早晩関係ない疾患も多くなる。
 特に、途上国の現場ではいまだに胃がんや肝臓がんの根治手術はできないでいる。
 その後の抗がん剤治療もないので、どうせ完璧な救命はできないからという理由もある。

 こういう、いわゆるがんの治療をしないでいると、なんか人を助けていないような気に陥るスタッフもいる。
 いのちに近々は危険がないような病気の手術をたくさんしていても仕方ないのではないか?
 という感じになる。
 私はかねがね言っているが、医療はその患者やその周りの家族の人生の質の改善こそが使命だと認識している。いのちを救う作業はその一部に過ぎない。

 しかし、どんな人の質をもっとも改善してあげたいか?と聞かれれば、死にそうな子どもたちやその家族の人生の質の改善が一番に頭に浮かぶ。

 いわゆる途上国では助からないようながんのような病気で、しかも超強力な治療をしなくても助かるようなレベルのもの。あるいは、1時間以内の手術で取り急ぎ救命できるできるものなどなど。

 ところが難題があってこういうレベルのものは、実はその国中に散ってしか発生しない。
 ということは、このような病気は患者側からこちらに向かって来てもらわなくてはならない。

 ではどうすればこういう病気がタイミングよくやってきてくれるのか?

 答えは、いのちには危険が早晩ない患者たちをどんどん治療するという方法しかない。
 そこに行けば医療があると多くに人々に認識してもらい、そしてそこで治療を受けた患者たちが自らその話をしてうわさが広がり、徐々に徐々に、患者たちがそこを目指すようになる。

 たいしたことがない病気だと患者を拒否したりしてはいけない。
 1円の大切さを認識できない人間は、1万円を得ることは難しい。
 たいしたこともないと思える多くの患者たちこそが、大きな川の流れを作り、その流れに乗って重症の患者たちがやってくる。

 3日前、ラオスでお腹がパンパンになった1歳の子どもがやってきた。
 昨年、ラオスの1歳の腎臓がんを日本で治療を行ったが、そのことうわさを聞いたそうだ。
 どうやら、胆管か卵巣か?しっかり検査するまで、はっきりわからないがしっかりとした治療が必要になる。

 毎月、ラオスで続けている巡回診療。そして手術ミッション。
 その延長線上に、腎臓がんの子どもがいて、そのまた先にこの子どもがいた。
 この子以外にも、もう一人右目の周辺が大きく腫大した1歳の子どももやってきた。

 人生も同じかもしれない。
 日々の些細なことをしっかりこなすことが、大きな成果を生み出すのだと思う。
 そういう意味では、毎日の一つ一つの事柄を大切に扱っていく心がけは必要だと思う。
by japanheart | 2015-02-08 13:17 | 活動記録