また死にかけたじゃないか
2015年 01月 12日
クリスマスの頃、それはイブの夜だった。
私は日本から素敵な恋人たちの大切な日に毎年空中移動をすることにしている。
今年もまた、ミャンマーへ向かう。
夜ようやくジャパンハートの宿舎けんオフィスに着くと、1人の子どもがジャパンハートの看護師に付き添われて待っていた。
今日昼頃よりお腹が痛くて苦しんでいるという。
お腹を触ると少し塊が振れる。
医療機器がここにおいてあるわけではないので、触ることしかできないが、いくつかの病気を頭に思い浮かべながら子どもを診察し、一度、浣腸をしてみた。
あまりよくならない。
その後点滴を採り、経口のものは全て控え、朝まで様子を見た。
あまりよくならない。
子どもの唇を見ると色調の変化があり、ある疾患が思い浮かぶ。
遺伝性の病気で腸にポリープができる病気だ。
このせいで、腸閉塞に陥っているのではないかと考えた。
私たちの医療活動地はそこから600KMは離れているので、はい、今すぐなどと簡単にそこまで運んで入院させるわけには行かない。
朝になって私はそのまま手術のために活動地に飛行機で向かう。
子どもはそのままヤンゴン市内の病院で検査を受け、そのまま入院になるだろうなと予想をしながら受診指示をして出発した。
その日の夕方、ヤンゴンから電話が入り、超音波で腸閉塞ですという診断ですという。
予想通り、例の病気による腸閉塞。
すぐに手術の準備に入っていると思いきや、入院はしなかったという。
診断してそれだけだった、、、。
やばいと思った。
多分、早くしないとえらい事になる。死ぬかもしれないと。
しかし、ミャンマーの病院では日本のように一大事、すなわち死にかけているような局面なら分からないが、そうでもない患者を緊急手術をしてくれるような病院はほとんどない。特に夜には絶望的だ。
特に内臓の病気は画像診断が止まるので翌朝まで確実に待たされる。っていうか翌夕方までかな。
最低、今運よくヤンゴン市内の病院に入院しても、手術はだいぶ待たされそうである。下手したら1日や2日は待たされる。
とっさに、できればそのままバスのチケットを取って600キロ離れた活動病院まで12時間かかるが送ることは可能かと聞いた。
何とかぎりぎりバスのチケットが確保できて、翌朝到着。
既に腸は破れたようで、お腹はパンパンになっている。
全身状態もよろしくない。。。
遅かったか!と思いながらも緊急手術。腸管壊死・腹膜炎から、ショックになっている。
とりあえず、長時間の手術に耐えうる余力もない感じなので、腐ったり血流不全になっている腸管を1メートル以上切除して、人工肛門を造って今は救命を図る。
術後も一晩中、脈拍は160回/分という状態だった。
運よくというか、本当に運よく、その後、徐々に回復していく。
ヤンゴンにあのまま置いていたら死んでいた!と思うとぞっとする。
この子は強運の持ち主かも。
私が帰国するその日に腹痛を起こしたこと。1日でもずれていたら、多分ダメだった。
すぐにバスで搬送をすると決断できたこと、そしてバスのチケットが手に入ったこと。
今は少しづつ、食事も採れて落ち着き始めている。
やれやれ。
今年も、サンタ並みに忙しく、ありがたいクリスマスのその日を天は私に与えてくれた。
その生きるか死ぬか分からない危機的な手術日に実は一つお願いしたというか、イメージしたことがあって、それは術後まる3日目のその日に、この子の笑顔を見てやろうと。
で、3日後、部屋に見に行ったら一瞬ほんの少し笑った、、ような気がした、、多分。
それはまるで神様に微笑まれた気がしないでもない。