国家というシステム、この厄介なもの
一月ぶりにラオスに来ている。
小児の腎臓がんの1歳の少女はまだ、この国を出ることができない。
一月前、すぐに用意し始めたパスポートの準備がまだ完了しないからだという。
ミャンマーでもそうだったが、こういう国の田舎の人々は戸籍もない人が多い。
だからそこから用意しなければならない。そこに時間が取られる。
今では日本も、1週間足らずでパスポートを取れるようになったが、私が学生の頃は1月かかるのが当たり前だった。
この国のことを笑えない。
今でも海外に来る日本人医療者には厚生省に頼んで英文免許を出してもらうのだが、これも平気で2ヶ月かかる。
プリントアウトされたものに、印鑑とサインがしてあるが、この1枚30秒で終わる書類をもらうのに申請して2ヶ月以上かかっても来ないことがある。
笑えないでしょ?今でも役所仕事というのは、こんな感じになっている。
こっちも笑っていられない。
子どもの状態が、いまいち悪くなっている。
飲んだものを吐いてしまう。
腫瘍も確実に大きくなっている。
体重も少しへってきた。
6キロほどの彼女の体重の1キロほどは腫瘍の重さだと思う。
吐いているこの子に今日は点滴を入れた。
少しでも時間を稼がなければ。
スタッフに言ったんだ。
「賄賂でも何でもいいから払っても死ぬよりはましだろ。早くパスポートを取ってくれ!死ぬ前に!!」
眉をひそめる人もいるかもしれないが、偽ざるべき私のこころの声だ。
明日、首都ビエンチェンに向かう。
親も子も一緒に、パスポートをとるための面接があるらしい。(マジで。ここは社会主義の国なんだ。)
中東ではイスラエルがカザを爆撃し、すでに数百人の人たちがなんと簡単に死んでいるのに、私たちは、一人を助けるためになんと苦労をしているのだ。
あまりの無力に笑えてしまう。
さっき子どもに点滴を入れたときに大泣きをしていたな。
大きな声で泣いてくれたので、少し安心した。
何とかしないと。
天はこの子にどんな運命を与えているのだろうか?
それも分からず、私たちは必死にやるしかない。
スタッフたちの健闘に期待する。