私は神様にいじめられている
2011年 07月 27日
テレビや報道を通して、私は大変横柄な人間だと思われている。
それは否定できない事実かも知れない。
ジャパンハートのスタッフたちは、私のことをとっても怖い奴と思っているに違いない。
きっと、ミスをしたらシコタマ絞られる。
ある人たちは、私のことをどうもS気たっぷりの人間だと思っているようだ。
しかし、と私は言いたい。
私は自分の人生を、なんとM気たっぷりな人生なんだと思っている。心の底から。
私をいじめているのは、あろう事か神なのだ。
私は神にいじめられている。
今回も、考えられないような大きな甲状腺腫瘍の女性がやってきた。赤ちゃんの頭くらいの大きさ。
年齢23才、極度の貧血(Hb 2.7)、普通の人の5分の一から4分の一程度の血液の濃度。
立って歩けない。もちろん。
しかも、小さい子どもと若い亭主が心配そうに付き添ってきた。
子どもは何も知らずにはしゃぎ回り、しかもやんちゃで元気。
腫瘍は、なぜかしら、破裂していて、大きな穴が開き腐って、中からたくさんのウジ虫が出てくる。
毎日、腫瘍を洗い、輸血をした。
すると3日目に、右足がぱんぱんに腫れ上がった。
調べると足の太い静脈に血栓を作っていた。
ミャンマーでは、血液は全血で輸血する。日本では、たとえば赤血球とか血小板とか、必要なものだけを輸血する。しかも日本は放射線を照射していたり、してなるべく副作用を起こらないようにしてある。
調べる術はないが、多分肺にも血栓が飛んでいたと思う。酸素濃度が少し低くなっていた。
血液を固まりにくくする薬を飲ませれば、逆に止まりにくくなりすぎという状態。
まあ、しかし何とか1月がんばって、やっと手術へとこぎ着けた。
本当は、やりたかないけど、私に隠れ場所はない。
手術が始まり、血が止まりにくい。
しかも、腫瘍が動脈や静脈とひどく癒着し、はがすのがすごく大変。
そして時々停電。
2000CCを越える出血。
どんどん輸血する。
用意していた1000CCの輸血はあっという間になくなり、A型の血液の人いますか??
とスタッフたちに声をかけると、皆快く、応えてくれる。
こういうときに普段さんざん飯を食っていて、太ってしまった人間に限って、血液型が違っているのが、おぞましい。
どんどん進む局面の中で、私は地球の中心からこう叫ぶのだ。
ああ、神様、なんでこんなに出血させるんですか???
ああ、神様、なんでこの大きな動脈がこんなにひっついているんですか??
ああ、神様、なんでこういうときに限って点滴のラインが詰まるんですか??
そしてだんだん、腹が立ってきて、最後はいつもこうなる。
「ああ、神様、なんで、なんで、こんな目に私をあわせる訳!! ??」
今までも、何度もこころで叫んだ私の言葉。
俺って、もしかしてついてない?
若い亭主は、どたばたとして、たくさん運び込まれる血液を見ては不安をかき立てられ
手術室の外で、そわそわ歩き回る。
子どもは何も知らずに、看護師たちと遊んでいる。
そして、 5時間後。
すっきりした首になった23才の若い母親は、意識を取り戻しながらゆっくり手術室から運び出された。
今日は手術後3日目、朝から座ってご飯を食べている。
子どもは相変わらすやんちゃに忙しい。
亭主は、にこにこしてご機嫌がいいようだ。
私は、こんな経験は二度とゴメン被りたい願っている。
いつものことながら。
だけど、神様は、また私をいじめにくるはずだ。
なんか対抗手段を講じないと。