特定非営利活動法人ジャパンハート ファウンダー・最高顧問。1995年より国際協力医療活動をはじめ、ミャンマー・カンボジアなどで、これまで1万人以上の子どもたちに手術を行ってきた。


by japanheart
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私は神様にいじめられている

私は神様にいじめられている

 テレビや報道を通して、私は大変横柄な人間だと思われている。
 それは否定できない事実かも知れない。

 ジャパンハートのスタッフたちは、私のことをとっても怖い奴と思っているに違いない。
 きっと、ミスをしたらシコタマ絞られる。

 ある人たちは、私のことをどうもS気たっぷりの人間だと思っているようだ。

 しかし、と私は言いたい。

 私は自分の人生を、なんとM気たっぷりな人生なんだと思っている。心の底から。
 私をいじめているのは、あろう事か神なのだ。
 私は神にいじめられている。

 今回も、考えられないような大きな甲状腺腫瘍の女性がやってきた。赤ちゃんの頭くらいの大きさ。
 年齢23才、極度の貧血(Hb 2.7)、普通の人の5分の一から4分の一程度の血液の濃度。
 立って歩けない。もちろん。
 しかも、小さい子どもと若い亭主が心配そうに付き添ってきた。
 子どもは何も知らずにはしゃぎ回り、しかもやんちゃで元気。
 腫瘍は、なぜかしら、破裂していて、大きな穴が開き腐って、中からたくさんのウジ虫が出てくる。

 毎日、腫瘍を洗い、輸血をした。
 すると3日目に、右足がぱんぱんに腫れ上がった。
 調べると足の太い静脈に血栓を作っていた。
 ミャンマーでは、血液は全血で輸血する。日本では、たとえば赤血球とか血小板とか、必要なものだけを輸血する。しかも日本は放射線を照射していたり、してなるべく副作用を起こらないようにしてある。
 調べる術はないが、多分肺にも血栓が飛んでいたと思う。酸素濃度が少し低くなっていた。
 血液を固まりにくくする薬を飲ませれば、逆に止まりにくくなりすぎという状態。
 まあ、しかし何とか1月がんばって、やっと手術へとこぎ着けた。
 本当は、やりたかないけど、私に隠れ場所はない。


 手術が始まり、血が止まりにくい。
 しかも、腫瘍が動脈や静脈とひどく癒着し、はがすのがすごく大変。
 そして時々停電。

 2000CCを越える出血。
 どんどん輸血する。
 用意していた1000CCの輸血はあっという間になくなり、A型の血液の人いますか??
 とスタッフたちに声をかけると、皆快く、応えてくれる。
 こういうときに普段さんざん飯を食っていて、太ってしまった人間に限って、血液型が違っているのが、おぞましい。

 どんどん進む局面の中で、私は地球の中心からこう叫ぶのだ。

 ああ、神様、なんでこんなに出血させるんですか???
 ああ、神様、なんでこの大きな動脈がこんなにひっついているんですか??
 ああ、神様、なんでこういうときに限って点滴のラインが詰まるんですか??

 そしてだんだん、腹が立ってきて、最後はいつもこうなる。
  「ああ、神様、なんで、なんで、こんな目に私をあわせる訳!! ??」
  今までも、何度もこころで叫んだ私の言葉。
 

  俺って、もしかしてついてない?

  
  若い亭主は、どたばたとして、たくさん運び込まれる血液を見ては不安をかき立てられ
  手術室の外で、そわそわ歩き回る。
  子どもは何も知らずに、看護師たちと遊んでいる。

 そして、 5時間後。
 すっきりした首になった23才の若い母親は、意識を取り戻しながらゆっくり手術室から運び出された。

 今日は手術後3日目、朝から座ってご飯を食べている。

 子どもは相変わらすやんちゃに忙しい。
 
 亭主は、にこにこしてご機嫌がいいようだ。

 私は、こんな経験は二度とゴメン被りたい願っている。
 いつものことながら。
 
 だけど、神様は、また私をいじめにくるはずだ。
 なんか対抗手段を講じないと。
  
  
  
by japanheart | 2011-07-27 02:46 | 活動記録