患者の視線
2010年 09月 24日
先日、ある村で診察を待つ患者やその家族。
いつものことだが、彼らは日本人以上に目でものを言う。
それは習性か、必ず何か伝えたいことがあるときは視界の中に現れる。
そして目でものを言う。
重病の患者も、子どもの治療を望む母親も、皆そうする。
だから目を合わさないようにしている。
こっちに向けられた熱い視線に、いちいち笑顔で応えていたら、身が焼かれる。
先日の診察の続き、、。
一人の30歳代の女性が、熱い視線、そして懇願するような意識を向けていた。
たいてい、本当に助けを求めている人間の視線は分かるようになった。
この女性のような視線が、それ。
視線に、ある種類の意識が乗っかる。
この女性は、多分、肝臓からでる胆管や膵管に異常がある。
膵胆管合流異常という病態だと思う。
大きな腫瘤が、おなかに触れている。
いくつかの検査をしてはいるが、治療をするお金はとうていなく、そのまま放置されている。
この女性には、何人か子どももいる。
もし、治療しなければ、膵炎で死ぬか、感染で死ぬか?
あと数年という期間は無理だと思う。
治療しなければならない。
しかし気が重い。
技術的なこともさることながら、あまりにも設備の面で、きびしい環境にある。
しかし、何度か、同じ病気をこの環境で手術してきた。
何度やっても、生きた心地がしない。
でもやらないといけない。
自らのいのちを削っているような作業だと、いつも思う。
多分今回は、この手術が入る。
あと数日後。
多くの仲間がほしいと思う。