”しんがり”をかってでる
2010年 04月 13日
負け戦の時、その軍団の大将をを逃すため、命を捨て敵を最後尾に残り、食い止める。
その多くは、死を余儀なくされる。そのため、もっとも勇気と度胸と忠誠心がある者がその役目を担う。
その役目を、殿(しんがり)という。
この時期、多くの機能が停止する東南アジアの仏教国の国々。多くの患者たちは、村でその時期を過ごすことを望み、無理を押して帰って行く。
ジャパンハートの活動もまた、この時期、やはり2週間ほどの休息に入る。
患者を残しながら、すこしずつ4月に入ると撤収が進められてゆく。
患者たちが水祭りが近づくにつれて猛烈な勢いで、帰路につく。
目標は、全員退院、全員帰郷。
最後までかなりきびしい患者もいるが、患者家族そして医療スタッフがその目標に向かって努力する。
ジャパンハートのしんがりはたいていの場合、看護師になる。
患者の傷を、治療し、最終決断を下す。
もし患者の状態が退院を許さなければ、たった一人、異国の地に取り残される。
数日間、患者を診て、自分で食事も水も用意し、残らなければならない。
せっかく用意した帰国のための航空券も、紙くずに変わる。
自分の責任で、それをやってのけなければならない。
しかしながら、ジャパンハートには自分からそのしんがりをかってでる人が、必ずいる。
彼らは命をかけはしないが、たぶん彼らの人生観や使命感、職業観という、意識がそれにかかっている。
しんがりをかってでれる人は、本当にプロになれる可能性はある。
人生はいつも、やるかやらないかの選択を繰り返す。
そしていつもやると選択するのは、面倒なことだ。
しかし、それを繰り返すうちに、いつしか自分を取り巻く世界が変わっていることに気づく。
10年前、私が見ていた景色は今はない。
おなじ場所に立ち、同じ景色を見ていても、すっかり違う景色を見ている。
同じ医者という職業をし、同じ病気の患者や家族と接していても全く違う世界にいる。
その世界は10年前より、遙かに美しい世界だと、認識できている。