特定非営利活動法人ジャパンハート ファウンダー・最高顧問。1995年より国際協力医療活動をはじめ、ミャンマー・カンボジアなどで、これまで1万人以上の子どもたちに手術を行ってきた。


by japanheart
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人事を尽くすとは

人事を尽くすとは

 昔の話。

 1995年頃、初めてミャンマーに来た。
 1996年、診察と治療をある町で始めた。

 医師としてまだまだ未熟な私と、病状が進行し、どうすることも出来ないような病気の患者たち。

 その中で何とか私の出来る範囲の治療を始める。
 多くの患者たちがやがて私の元に治療を求めてやって来るようになった。


 人の運命とは何なのだろうか?
 一生懸命、私が寝食を忘れ治療しても亡くなってゆく人たち。
 一方、ミスを犯しながらの治療であっても、どんどん回復してゆく人たち。

 私の存在は何なのだ?
 何度も自分に問いかける。

 人には運命というものがある。
 人が生きて、そして死ぬ。
 それはその人の運命で、私には分からない。

 目の前に患者が現われる。
 死ぬか生きるかそれは分からない。
 でも私は悩み、もがきながら、一生懸命に患者に向き合う。

 結果は神のみぞしる。

 しかし私は一生懸命治療する。

 生きる、死ぬ。
 それは患者本人の寿命かもしれない。
 それは全て、私には不確かなこと。
 私の手の内にはない。

 でもたった一つ、確かなことがある。
 私の手の内にあるたった一つの確かなこと。

 それはその患者にどう向き合ったか?
 どのような態度で、どのようなこころで、向き合ったのか。
 ということが、まぎれも無く、私自身の人生の時間であるということだ。

 弱き医師は、おどおどしながら、結果も分からず、ただ一生懸命に、目の前に現われた患者に尽した。

 それは今でも変わらない。

 せめてミスを犯すという縁起を、もって患者の死というの系に、関わらないと誓っている。
by japanheart | 2009-10-19 04:50 | いのちの重み