特定非営利活動法人ジャパンハート ファウンダー・最高顧問。1995年より国際協力医療活動をはじめ、ミャンマー・カンボジアなどで、これまで1万人以上の子どもたちに手術を行ってきた。


by japanheart
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アジアの小児がんの子どもたちを救おうと思う


 この時期にカンボジアに病院を設立する。

 

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 20年以上の間、アジアの途上国で医療を行ってきて確実に人々を取り巻く疾病状況にも変化を実感する。

 現在はラオスと中国の国境の山岳で医療をしていても、ミャンマーの僻地にいても、カンボジアの田舎町で医療をしていても、その町で暮らす人々の多くはみな市販のミネラルウオーターを飲んでいる。

 多くの人々はインスタントラーメンを当たり前に食べている。

 20年以上前、アジア最貧国といわれた時代のミャンマーは、川の水や池の水を簡単な陶器でろ過して飲んでいる人々が多かった。最近ではあまり見かけなくなってしまったが。


 日本人の多くはいまだに勘違いをしているかもしれないが、下痢で命を落とす子どもたちは今やそう多くはないのだ。

 どこのも町にも抗生物質は多くの種類そろえられており、いつでもそう高くない値段で購入できる。

 もちろん点滴も受けることが大抵はできるのだ。

 これらの変化は、アジア全体の経済状況の底上げが大きく影響している。

 その中でも中国の経済成長は思わぬところで、多くの人々の命をあくまで意図せず、結果的にではあるが救っている原因の最たるものだと思う。


 もし国際機関やNGOをはじめ多くの人々が相変わらず30年前のコンセプトでものを考え同じ行動を繰り返しているとしたらその多くの努力は結果には反映されておらず無駄になっているかもしれない。


 そのような社会的変化の中で、私たちもメインで対応するべき疾患を変えるべき時期が来たのだ。

下痢や急性の呼吸器疾患だけでなく、多くの子どもたちが命を落としている疾患とは何なのだろう?


 ひとつは、先天性の心疾患。生まれつきの心臓奇形がある。これは100人に1人の割合で生まれてきており、形態の異常を手術等で修正しなければ多くの子どもたちが命を落とすことになる。

 おそらく、ミャンマーだけで1年に1万に以上の心疾患の子どもが産まれ、多くは治療できずに死んでいく現状である。出生率からするとカンボジアは3000人以上、ラオスは1000人以上生まれていると思う。

 ミャンマーではなんと子どもの心臓外科医はたった一人も存在しないのだ。

それが何を意味するかは誰でも理解できると思う。


 長年見過ごしてきたこの事態に私はとうとう昨年から手を付け始めたのだ。

いろいろ動いて結果的には、東京女子医大の小児循環器科と国立循環器病センターの小児循環器科の日本を代表する人々が協力をしてくれることになり、産経新聞社の基金を使い、多くの医療者を現地に派遣、現地の医療者を日本に招聘して勉強してもらいつつ時間をたっぷりかけて子どもの心臓病の医療者たちを育成することになったのだ。ジャパンハートの役目はそれら全ての現地での動きをコーディネートすることになり、この4者で時間をかけて子どもたちのいのちを救っていく活動が昨年から始まった。


 実は、もうひとつ私が長年見過ごしてきた病態がある。

 それは小児がんだ。

 その多くは白血病であろうと思われる。

 日本では年間2000~3000人の小児がんが発生するといわれている。

 そして白血病の場合は今では多くの子どもがサバイブできる状態になっている。

 ところが、私たちが活動するミャンマー・ラオス・カンボジアでは昔の日本のようにほぼ全滅している可能性が高い。

 カンボジア、ラオスではおそらく十分な抗がん剤すら揃っていないかもしれない。


 しかし、時代はそういう国々でも、日本のように多くの子どもたちが救えなくても、日本のたとえ半分の割合の子どもたちでも救わなければならない時代になったと感じている。

 日本のような高額な医療をできなくても、昔から使っている今では薬価が下がった薬を使った治療であっても、半分くらいの子供たちが救えるのではないかと私は希望を持っているのだ。


 日本政府は多くのお金を日系企業にサポートを与え現地の富裕層相手の病院建設のために私たちの税金から拠出している。それはもちろん無策で行っているわけではない。日本の製品を世界に販売していくためのサポートをしているということだろう。

 しかし、その税金はおそらく現地の貧困層の人々には届かないだろう。


 昔、ミャンマーの医療機器メーカーの人が私にこう言ったことがある。

「金持ちは私立病院に行き治療を受ける。その次にお金を持っている人々は政府の病院に入院し治療を受ける。その人たちよりお金がない人は政府の病院に入院はするが、何もしてもらえずそのまま亡くなる。本当の貧乏人はどこへもいけずに静かに村で死んでいる。」


 日本の良識ある国民は自分の税金がどちらに使われたいのか、もう一度、自問してもらいたい。

 貧困層の病院なのか?

 富裕層の病院なのか?

 私はせめてその10分の1でもいいから、もう少し貧困層にも届く税金の使い方を自国の政府にはしてほしいと、一国民として純粋に思うのだ。


 しかし、嘆いていても始まらない。

 誰かがこのような貧困層の人々でも医療が受けれる病院をつくらなければならない。

 だから自分がはじめようと思ったのだ。

 誰かに期待していても何も始まらないから。


 スタートが1日遅れれば何人もの子どもたちの命が失われるかもしれない。

 だから、そこに1日でも早くたどり着けるようにお金も十分ないのに建設をスタートさせてしまった。

 

 その病院がいよいよこの6月あたりからスタートする。


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 アセアンは昨年末経済統合され、ユーロのようになっていくだろう。

 既に医療者の免許の統合に向けて進んでいる。

 この病院に各国の若手の医療者たちを集め、日本の医療者が指導・教育できる仕組みをつくる。

 各国からバスや格安の航空機を使いやってきた病気の子どもたちを各国の医師や看護師たちと一緒に治療する。


 まずは第一期の段階は周産期の治療から始める。安全なお産と新生児へ対応になると思う。

 そして第三期を迎えた段階で、小児がんの子どもたちを受け入れ始める。


 それが早くなるか遅れるか?

 私たちのファンドレージングの能力、そして医療者をはじめとする日本人たちの力を私たちがどれくらい集めれるかにかかっている。


 今はボードにのって静かに時代の大きな波を待っている。 


 PS:

    先日、ラオスで5歳の男の子が白血病で静かに死んだ。

    お金がないから、当たり前にタイに治療にも行けなかった。

    父親は虫の息になったわが子を見て「タイに連れて行きたい」と言った。

    私たちは無力だった。

    ただ病院のベッドに寝かせておくことしかできなかった。昔の日本の医者のように。

    

    この光景が私たちが活動する国々で毎日、毎日、何十回も繰り返されている。

    



by japanheart | 2016-02-29 01:35 | 子どものこと | Comments(2)

これから20年の国際貢献のゆくえ~途上国医療のこれから


 時の流れは速いものだ。

 20年なんてあっという間。

 しかし20年あれば十分、時代は大きく動いている。


 1980年代中頃、医師を目指して医学部に入学した。医師を目指した理由はたった一つ。絶対に医療を受けることができない人々に医療を届けたいと思ったからだ。

 そして30歳のとき日本で数年間医師としての勉強を終了し、途上国へ向かう。

 そしてミャンマーを訪れた。

 私が医師を目指したとき外国で働くというのは、北米や欧州で勉強や研究に行くこととほぼ同義だった。医師として途上国で働くなどということはもちろんほとんど有りえない選択肢だった。

 もちろん、日本政府や国際協力事業団(JICA)からの派遣として幾ばくかの期間、技術協力・指導などの目的でその土地に赴くことは選択肢として与えられていた。しかし、それはしっかりとしたステイタスと高額のサラリーが保証された特別な分野であった。


 そんな時代に、日本政府の後押しもなく、途上国医療を目指し、実際に途上国の医療現場に赴く人間は完全に標準の±2S.D.(標準偏差)外、しかもマイナス2S.D.のはるか彼方に存在するまさにoutlierであり、それは否定の対象にすらならず、無視あるいは黙殺する特異な存在であった。


 それから20年。

 私のやっていることは20年前とほとんど変わらない。

 しかし、時代は確かにしっかりと動いていた。

 

 日本の権威ある医学学会、シンポジウムなどから声がかかるようになった。

 かつては厳格な医局制度の中で、途上国などで医療をするという馬鹿げた?行為を徹底的に否定してきた人々が、私の話に耳を傾けるようになったのだ。

 若い世代の医師たちだけでなく、大学教授や大病院の部長などの人々が、途上国医療に興味を示してくれるようになったのだ。

 今年も5月には日本小児外科学会総会で講演する予定になっている。


 そして今や現実に海外の私の元には年間に600名程度の医療者がその活動を支えるためにやってくるようになった。そして今後、その流れはますます加速する。

 これは時代の流れだから、おそらく誰にも止めることはできない流れになると実感している。


 さて、この延長線上で次の時代を私なりに予想している。

 これから15~20年で、時代は再び大きく変わる。

 人工知能の発展が医療そのものの姿を変えてしまうだろう。

 人々の病気は予防医学の劇的な進歩によって治療という医療の重要な役割の比重を大きく下げることになる。

 アジアは大きく経済発展し、都市部での医療レベルは東京でもバンコクでもマニラでも北京でもおそらく変わらなくなるだろう。

 今は日本の医療界も医師や看護師が足らないと必死になっているが、あと2030年もすれば医師や看護師は大きくその役割を変え、今ほど人数は不要になる。今は数こそ力だと一生懸命に人を集めている学会や医局にも人数制限が設けられ、簡単にはそこに入れてもらえなくなると思う。


 医療レベルの差は都市部で変わらない一方、非都市部では各国の経済レベル、政治レベルの差によって発展度や達成度に差が生まれ、政治や経済が上手く機能していない国ではしばらくの間、日本などの先進国の人々ほど時代の恩恵を受けることはできないだろう。しかし、それも時間の問題で解決されていくに違いない。

 それほどに医療は、医療者が知らないところで大きく地殻変動を起こしつつある。


 今後、この時代ギャップによって医療を享受できない途上国の人々に医療を届けるのがジャパンハートの役目になると考えている。


 とりあえず15年、今の延長線上でしっかりと途上国の貧困層に医療を届ける。

 それからさらに15年は、時代の恩恵から取り残されている人々に医療を届ける。


 その後のことは私にも今は全く分からない。


 


 



by japanheart | 2016-02-18 00:59 | 医者の本音 | Comments(0)