ジャパンハートの代表。1995年より国際協力医療活動をはじめ、ミャンマー・カンボジアなどで、これまで1万人以上の子どもたちに手術を行ってきた。


by japanheart
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

<   2015年 05月 ( 3 )   > この月の画像一覧

現在の価値を知る

現在の価値を知る

医者になって二十数年が経ち、もうすぐ50歳になる。
思えば、研修医の頃が懐かしくなる。
早く一人前になりたくて、いつも焦っていた。
中身はともかく、長い時間働いていた気がする。いつもチャンスがあれば寝る機会を伺っていた。
働き出してふと見上げた空に星がたくさん輝いていた。空はもう肌寒い秋の空だった。働き出して6ヶ月も空を見ていないことにそのときはじめて気づいた。
30歳になれば少しはましな医者になると思っていた。なってみたら全くもって大した医者にはなっているとは思えなかった。
そして100万円を握り締めて軍事政権下のミャンマーに単身乗り込んだ。本当は軍事政権だとは知らなかった。
30歳の頃の私は十分な医療をミャンマーの人々に施すことは出来なかった。いつもすまない気持ちでいっぱいだった。
30台で小児外科を学び、NGOも創設した。40台で少しはましな医者になっているかと思えば、満足できるレベルには達していない。
今から思えば、上を目指して毎日、毎日、とにかく体力にものを言わせることが出来ていた研修医の頃が一番幸せだった気がする。
能力も技術もなかったが、希望だけはあった気がする。

うちの父親は74歳で亡くなり、祖父は73歳だった。
もう一度、医師になってからの時間をすごしたときに、私はもうこの世に存在していないかもしれない。
ついこの前、医者になった、研修医をしていたと感じるのに。

時間とは無常なものだ。

どんなに努力し、優れた技量や強さを身に着けても、その存在と共にこの世から消えてなくなってしまう。

毎日、毎日、惰性を貪っていた過去が悔しくて仕方ない。
今も、毎日、失敗しても良いから若かったあの頃のように、体力のその限界まで自分と向かい合ってみたい。
夢などなくてもいい。
人にはもしかしたら理解してもらえないかもしれない。それでもいいのだ。


きっと今やらなくては、未来の70歳の私が後悔する。

時間は私の人生そのものだ。
今もこの瞬間も磨り減って消えてゆく。

今、この瞬間は過去の自分が夢見て希望していた通りの私であるだろうか?
今、この瞬間を私はしっかり味わい、そして恍惚の中で生きているのだろうか?
さくらの散る美しさを私は十分感じたこの春だったろうか?
五月雨をこの身に受け、毛穴を開き、その地球のしぶきをわが身わが心で歓喜と共に受け止めることができたろうか?
夏の熱い太陽の日差しを受け、この身に吹き出す玉の汗を喜びをもって、送り出すことが出来ていただろうか?

未来の目標や希望は私たちに力を与え、生きてゆくエネルギーになるかもしれない。
でも、そんなことより、今、この瞬間を心から味わい感じ、辛ければ心から苦しみももがき、うれしければ心から喜び笑う。
それ以上の幸せなどない。

1000年後、この世に今の誰もなく、今みんなが不満を抱いていることもこの世になく、すべては宇宙の闇に帰る。

うちの父親が死んだとき、病室で10時間その亡骸と二人きりだった。
私から見ても決していい人生でなかった親父から、「俺は後悔ないよ」という言霊がびんびん伝わってきた。
「お前もそういう人生を生きろよ」というのが親父の最期の教えだった。

e0046467_16394627.png

by japanheart | 2015-05-26 06:25 | 随想 | Comments(0)

伝えるべきもの

伝えるべきもの

 私の子どもの頃の同級生に有名なミュージシャンがいるのだが、先日彼の所属会社にお邪魔した。
 
 そのとき社長も一緒に同席されて、しばらく話をした。

 そのとき、社長が私に言っていたのは、それそろいい年になりつつあるからもっと体を労わっていかないといけないということと、人の持つメッセージ性というものだった。

 このメッセージ性は多くの人のあり方のヒントになるかもしれないので今日はそれをshareしたい。

大体かいつまんで言うと以下のようになる。

 1) 歌が上手いだけでは売れない。
 2) ルックスだけで売れることもないので、今はそういう人を求めてはいない。
 3) 売れる人には必ずメッセージ性というものが備わっている。
 4) 伝えたいメッセージが音楽を通じて、お互いの魂で感応して、伝わっていく。

 これは多分、音楽だけでない。
 きっと、人は何をするにしてもメッセージ性を持っていなければ、広がらないのだと思う。
 自分に備わるメッセージ性とは何か?
 自分は何を伝えたくて今、この仕事に就いているのだろうか?
 
 そういうものを今一度点検してみてはどうだろう。
 表面的な理由ではなく、ずっとずっと自分の心の本音の部分に切り込んでいきながら、確認してみては。

 ちなみに、その同級生は、今ある自分のあり方を、私と同じだと言っていた。

 自分は自分のために、音楽をやっている。
 自分がやりたいから音楽をやっているのだと。
 何のために音楽をやっているのかわからなくなった時期を経て苦しみながら、その結論に達したようだ。
 自分のために生きるのだと悟った人間は強い。
 なぜならば、迷いがなくなるからだ。

 これからの彼にもっと期待をしたい。
e0046467_17361352.jpg


 
by japanheart | 2015-05-20 00:33 | 活動記録 | Comments(0)

命のつながり

命のつながり

普通、海外で医療活動をやっていると生死にかかわる患者ばかりがやってくるわけではない。
多くは日本でもいるような患者たちであり、子どもになる。
私は外科を主にやっている関係上、手術が必要な子どもが多くなるが、近々、生死にかかわらない。
私はこのような患者たちの流れを、実は大切にしている。

このような患者たちをしっかりしかもたくさん治療していることが、生死にかかわるような重症の子どもを引き寄せる基礎的な土台だと思っている。

日本でも重症の患者だけを診たい欲求に刈られている医療者は多い。
効率よく自分の人生の時間を使いたい、あるいは医者としての能力を上げたいと思っているのだろうが、そんなに上手くいく人生などない。
医師人生もない。

これは小口の取引を拒否して、大口取引だけし、大きく儲けたいと思っているようなビジネスモデルと同じだ。
これを普通の人間がやることは難しい。出来る人もいるが。
ミャンマーでは過去何度も、政府が流通通貨を一夜にして無効にした歴史がある。
いきなり今日から、今まで苦労してためたお金が紙切れになったのだ。
だからミャンマー人は基本、自国の通貨に対する信用は低く、外貨で持ちたがるし、不動産やその他の現物に変えることが多い。
なぜそんな風にする必要があったのか?
ひとつの理由に、中国人やインド人に大部分ビジネスを握られ、ビルマ族の人たちがお金をもてなくなっていたからだ。
ビルマ人と中国人のビジネスに対する大きな印象違いは、中国人は小さなビジネスを大切にし、流れを作り、やがて大きなお金を持っていく。
一方、ビルマ人は、一発、大きなお金を稼いでやろうと、小さなビジネスチャンスを大切にしない。だから大きなビジネスチャンスもやってくることはない。
そして気が付けば、すべて中国人とインド人にビジネスを持っていかれる。
そして政府がお金を無効にする。

この話から得れる教訓は、小さな流れを大切にすることだ。流れも出来ていないのに大きな収穫を狙ってはいけない。
コツコツした小さな努力の積み重ねが、大きなチャンスを呼び込む。
何気ない小さな成果がいくつも寄せ集まってやがてしっかりとした土台となり、その上にすべては載せられていく。

かつてある看護師に、このような比較的軽症な患者たちをこんなにいっぱい手術してどれほどの意味があるのかといわれたことがある。
そのときも、さっきの理屈を話したが、本当に助けたい人を見つけたければ、この流れを生み出すしかない。
そのときは、分かっていたかいなかったが、わからないけど。

先日、最近、ラオスでは腎臓がんの1歳の子ども、悪性リンパ腫の子ども、胆道拡張症の1歳の子ども、カンボジアで6歳の腎臓がんの男の子などなど。
全部、やってきてくれそれを治療できたのだ。

それはすべて特には命にかかわらない疾患で治療を受けた人たちが支えていた命ということになる。
そういう縁で結ばれた患者たちなのだと思う。

自分の命は知らないところで人の命とつながっている。

e0046467_09303601.jpg

by japanheart | 2015-05-08 14:26 | いのちの重み | Comments(0)