体温のある医療ー最終
2009年 01月 02日
先日の続き、そして最終。
今日1月1日、約45日に及ぶ激しい病状との戦いの末、27歳の女の人は息を引き取った。
苦しくなっときいつも耳元では、彼女のお姉さんが仏教のお経を読んで聞かせていた。
夜眠るときも、お昼の時間も。
もう15年近く、寝たきりの彼女はいつも横を向いている。
でもほとんどの事は良く分かっていて、言葉は失っているが、意識ははっきりしている。
いつも何を考えていたのだろうか?
彼女のお兄さん、3人のお姉さんたち。
いつもいつも彼女を見守っていた。
彼女の心臓がすでに止まり、まだ体温が暖かいとき、私は家族に向かってこう言った。
「あと10分でこの子の心臓は止まります。そして死にます。お姉さんたち、どうぞ耳元で仏教のお経を彼女のために上げてあげてください。彼女の耳は、聞こえているはずです。」
それから10分間、2人の姉たちの同じお経が何度も何度も、彼女の耳元で繰り返された。
病院の中で、スタッフや家族の心の中でその音律が何度も木霊する。
周りにいる家族、医療スタッフはそのお経を聞き静かに泣いている。
これがミャンマー人の死に方なのだと思った。
何年もこの土地でやってきてようやく最近そんなことがわかってきた。
仏とともにあり、仏とともに死す。
私はその光景を静かに見守っていた。