特定非営利活動法人ジャパンハート ファウンダー・最高顧問。1995年より国際協力医療活動をはじめ、ミャンマー・カンボジアなどで、これまで1万人以上の子どもたちに手術を行ってきた。


by japanheart
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一から広がる世界

ようやく、ラオスの腎臓がんの子どもは日本に来れた。統計的には日本で治療できれば生存確率は7から8割。
あと1週間、来日が遅れていたら繰り返す嘔吐や低栄養、脱水あたりで死んでいたと思う。
あのタイミングでラオスを訪問できてよかった。

日本人たちは今日も、肥満を気にしながらおいしいものを食べ、世界の飢餓の子どもたちを心配する。
所詮、他人のいのち。
それは、現実に起こっているだろう事だが、映画の中の出来事のように感じる。
それはそれで仕方ないことだと思う。
人間は、同時に空間をまたいで生きることはできない。
アフリカの飢餓が、カザの空爆が、どんなに許しがたい現実の出来事であろうとも、自分の現実にならない限り動けないのだ。
人間とはそういうものだ。

そう考えるとこれらに介入するためのポイントは、それを如何にそれぞれの人間にとっての現実にできるかということになる。
しかし、それは向こうからはやってくることができない。向かうからやってくるような認識を作り上げることができるのはマスコミの力だと思うが、それを行使できるマスコミと人間が少ないのは悲しいことだ。
 いくら有名人でも自殺した人間の話や芸能人のゴシップを繰り返し流しても、誰も助かりはしない。
日本の政府にアジアの富裕層相手の病院建設のためにODAを与えるその5%でも貧しい子どもたちの有効で、確実な
わたしたちのような活動にまわしてくれるのが国民の声だとしたら、TVや新聞をそのようのな貢献のためにたとえ3%でも裂くのが世界の常識になればいいなと思う。

第二次世界大戦の前に杉原千畝という外交官が迫り来るナチスやソビエトの迫害からユダヤ人を救うために数千枚のビザを日本本国の命令に逆らって書き続け多くのユダヤ人を救った有名な話がある。
これのポイントは、彼にとってのユダヤ人はやはり自分にとっての現実になったということだ。
彼には大切なユダヤ人の友人がいたという。11歳の少年とその家族だった。
彼が書いた命のビザの最初のものはその家族に対するビザだったのだ。
彼にとっての現実は、迫害を逃れたいと逃げてくる多くのユダヤ人たちではなく、この家族だった。
その家族がいて、そしてその向こうに数千人のユダヤ人たちがいたのだ。

それが私がたった一人の命の医療にこだわる理由なのだ。
私の前に現れたラオスの1歳のがんの少女こそは私の現実であり、世界に多く存在する同様の子どもたちはいまだに現実ではない。
しかし、あえて言うと、そのまだ見ぬ子どもたちが、この1歳の少女の向こうに存在すると確信している。
多くの子どもたちを救いたければここから始めるしかない。
自分と接点のない世界の悲劇は、私の人生に力を与えてはくれない。

理性は動いても、心が動かなければ、世界は変えれない。

今日、岡山医療センターでこの子の手術が始まる。
日本の小児外科の重鎮で中四国地方でナンバーワンの小児外科医 青山興司先生と彼の後継者でこれから日本の小児外科の世界を背負ってたつだろうと私が確信している中原康雄先生が執刀してくれる。

昼寝でもして結果を待とう。




一から広がる世界_e0046467_02414725.jpg

by japanheart | 2014-08-07 02:36 | 活動記録