25歳の女性の話
2013年 12月 13日
その人は、生まれつきの腸閉塞だった。
肛門が無かった。
だから便が出なかった。
生まれてすぐに手術して人工肛門を造った。
それから25年人工肛門はそのままだった。
肛門の手術をした。
彼女には恋人がいた。
恋人は、彼女の病気のことは知らない。
人工肛門を直す手術は2年前に行った。
簡単に言うと、口側の腸と、お尻側の腸をつなぐ手術だ。
もっと簡単に言うと、2本のパイプをつなぐ手術。
ところが、問題があった。
そのパイプ、すなわち腸の大きさが4倍も違うのだ。
4倍の大きさの入り口がある腸を縫い合わせなければならなかった。
手術は、当時ミャンマーに来ていた日本の外科医が担当した。
そして1週間後、便が漏れた。縫ったところに大きな穴が開いたのだ。
おそらく、上側の腸が大きすぎて便がたまり、下のほうに縫った腸の中へ上手く通過しなかったためだと想像できた。
そして再び、人工肛門を再度、逆戻り。
仕事の持っているため、長期になかなか休めない。
この国では、長期休みはすなわち、退職を意味する。
そして2年。ようやく時間を確保して、今回、再び人工肛門を造ることに。
前回の、便の漏れのせいで大腸も幾分か切除され、短くなっている。
お腹を開けてみると、今度は6倍くらいの大きさに上下の腸の大きさが違っている。
そして決断。
拡張したすべての腸を切除した。
大腸は、半分の長さになった。
あれから10日間。
今は元気に、おかゆを食べている。
これから、25年以上の彼女の人生とは違う人生が始まる。
恋人とも結婚も視野に入れていくだろう。
彼女のために手術をしてくれた医師たち、看護師たち。
お金を出してくれた人たち。
ずっと飽きずに連絡を取り続けてくれたスタッフたち。
すべての人たち苦労が報われるのは、これからかもしれない。
たった一人の人間の人生を変えるために、一体、どれほど多くの人たちがエネルギーを使ったことだろう。
医療というのは、こういう地味な世界だと肝に銘じなければならない。