カンボジアの貧血の少女
2012年 05月 15日
今回のカンボジア手術ミッションはミャンマー人看護師を連れての参戦となった。
昨年からフォローしてきた10歳の貧血の激しい少女がいる。
大きく脾臓が腫れてへそのした5cmまでの大きさになっている。
通常の脾臓は横隔膜の下にあり、肋骨の下のラインからは出ない。
貧血が結構あって、時々、輸血をしてきたらしい。
本来は、血を採って分析したり、顕微鏡で見たりして診断にアプローチする。
時には、骨髄の中身を調べる。
しかし、、、、
カンボジアでは、病理医といわれる診断をする医師がいない。
この子の血を、一度顕微鏡で日本で調べてもらったが、診断は確定せず。
次は、骨髄ということになるが、カンボジアではここで終わり。
やがて、貧血と血小板の減少が進む。
脾臓で、血液がトラップされ壊されていることはわかる。
血小板が徐々に減り、9万ーー>7万ーー>5万ーーー>4万と下がりいよいよ出血の心配が出てきた。
(普通の人は血小板は30万以上はある)
次回私が来るのは数ヶ月後、出血はどこに起こるかわからない。
脳に起これば、それでお終い。
だから診断はともかく、この巨大な脾臓を摘出することになった。
輸血を準備していざ、スタート。
大きい脾臓を安全に取るために、ベットの角度を様々に変えながらしっかり視界に細部まで臓器を捕らえて取る、、はずだった。
「じゃ、頭を下げるようにベット動かして!」と私。
「すいません。このベットは壊れていて角度が変えないんです」と看護師。
「WHAT????」
奥が全く見えない!じゃないか、、、、、。
「じゃ、XXXX鉗子をくれる。」
「すいません。今、洗ってま~す!今から30分位で滅菌できます」
「WHAT???」
この子、殺す気???
結局、この脾臓、まわりと結構、癒着もしていて膵臓も一部切除、新生血管が入り込んでいた横隔膜の一部も縫合し、締めて900ml出血した。もちろん用意していた輸血も行い、全く何もなかったように手術は終わりを告げた。
私は、またしても2日も前から準備に現場入っていながら、ベットや器具の用意もまともに確かめていなかったスタッフたちにその後、きつく説教をしたのはいうまでもない。
「殺す気か!お前ら!!!」ってな感じで。
どうやら、もうすぐ退院らしい。