確率 1億2000万 X 1億2000万 分の 1
2012年 05月 06日
昨年末頃から、患者の数が大きく増加している気がする。
石巻に日本人スタッフを、無理矢理向かわせた関係で、ミャンマーの医療活動は、医師は私と2名のミャンマー人医師たちになってしまうことがある。
大きな手術は、主に私がいるときに行うことになっているので、増えて来だした患者たちの手術をまさに捌いていかねばならない。
1日に15から25件の手術を行わなければならない。
執刀は私たったひとり。助手にミャンマー人医師たちが付く。
多いときには200名を超える外来患者が押し寄せる。
とても1日では見切れないので、翌日に振り分けられる。
日本人の医師に診てもらいたい。
という希望を無下にもできず、何とか診ていると、時は夕方になってしまう。
そこから、その日の手術が開始される。
毎日明け方まで、12時間以上手術が行われ、私は今や宿泊施設にも帰れない。
手術室の横の、床の上に寝袋をひき、そこが私の睡眠場所になっている。
約3時間、毎日睡眠をとり、早ければ昼頃から、遅くなれば夕方から手術が始まる。
宣伝もなく、噂だけを聞きつけ、ミャンマー中から患者が押し寄せる。
何日もかけてやってくる人たちも多い。
もっとも多くの患者が来る地域は、病院から車で飛ばして4時間、ほとんどはバスで6時間かけてくる。
だからなるべく私は丁寧に診ることにしている。
積極的に超音波検査やX線などを行う。
在外の日本人たちから一様に、働きが悪いと思われているミャンマー人たち。
しかしながら、私たちの元にいるミャンマー人は大概、朝から晩まで働いている。
今後、どうなっていくかは全く不明。
健康に留意してくれという励ましはいつも受けるが、コントロール不能。
運を天に預ける。
学生相手に最近、100万人にひとりのプレイヤーになるためにはという講演をしている。
もちろんそれは彼らが私のことをそう呼んでくれている。
後継者はどうするのか?と良く受ける質問だ。
何度も何度も受けてきた。
最近、私は自分は100万分のひとりでないことに気づいた。
私と同じように、途上国で実際に患者を治療する臨床医療に、長期間、このくらいの密度で没頭している人間は多分、日本にはいない。
いたら教えてほしい。
確かに、活動の一部に医療を行ったりしている人はいるかもしれない。
しかし、それでは、やはり同列ではない。
私の場合は、日本の大学の小児外科講師をしていたときよりも、格段に医療の技術は進歩している。
昔の杵柄、で生きているわけではない。
たとえ途上国で医療をしようと、医療技術が日夜進歩してこそ、臨床医療を本気でやっているといえるのだと思う。
10年の時を経て、このまま日本に帰って医療をすれば、そのまま通用する。
大体、10年前の私と今の私では、人間力が全く違う。
この10年で、仕方なくながらそれほどの経験を頂いたのだと思う。
この閉塞感たっぷりの日本で、10年以上の期間にわたって、途上国でひたすら臨床医療を続けて来た私の存在は、1億2000万分のひとり、ということになる。
だから私の後継者が、もしも私の元に現れたなら、奇跡としかいいようがない。
その確率は1億2000万 X 1億2000万 分の 1 !
まあ、あり得ないだろう。