特定非営利活動法人ジャパンハート ファウンダー・最高顧問。1995年より国際協力医療活動をはじめ、ミャンマー・カンボジアなどで、これまで1万人以上の子どもたちに手術を行ってきた。


by japanheart
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我が美しき景色

我が美しき景色

 私にはどうしても死ぬときに見ていたい光景がある。
 かつて何度か同じ景色を見て、「ああ、人生あってよかった!」と思ったことがある。

 いくつもすばらしい光景や美しい光景を見てきたが、私にはそれを越える光景はなかった。

 私の第二の故郷、大分で学生時代を過ごしていた頃、いつも授業をサボって夕方近くになると
 近くの温泉に出かけた。
 
 当時、多分今も、大分は温泉の宝庫。
 ただの温泉もまだまだたくさんあると思う。
 私はいつも、大分市の外れ、狭間町にあった、ある温泉に出かけていた。
 1回100円、薄い黄色のとても良い香りのする温泉だった。
 
 秋の夕暮れ、いつも温泉から山道を、ドライブして帰った。
 秋の風は気持ちよく、村々の夕暮れも心地よかった。

 その帰り、いつも多くの田んぼがあった。
 秋の夕方、たわわに実った稲たちが、夕暮れの太陽を浴びて、金色に輝き、風を受け少し揺れていた。
 私は何度かその光景に出会った。
 いつもこころ奪われ、しばし車を止め、日が暮れるまでそこにいた。

 日本にはこんなに美しい景色があるのだと思った。
 お米は不思議な食物だ。
 

 是非この光景を見ながら死にたいといつも思っている。
 だから、多分私が死ぬ季節は、秋かな。
 美しさの中で死ねるなどということは、何と日本人の心を揺さぶるのだろうか?

 そんな光景や場所をみんな持っているのだろうか?
 
 人間、明日死ぬのだと思えば、殆どの欲がはげ落ちてゆくが、その後、何が残るのだろう?

 欲は人のエネルギーだと最近、つくずく良く分かる。
 私は、それほど欲深くないので、何事も、まあこれくらいだってすぐ思ってしまう。
 自分が結構、淡泊なのだと、最近よく分かる。

 若い人たちを見ていると、全く美しくはないけれど、様々な欲望のために邁進しているのを見ると、
 少しうらやましくなる。

 美を備えた人間になるには今何をすればいいのだろうか?
 
 
by japanheart | 2011-10-09 11:31 | 医者の本音