特定非営利活動法人ジャパンハート ファウンダー・最高顧問。1995年より国際協力医療活動をはじめ、ミャンマー・カンボジアなどで、これまで1万人以上の子どもたちに手術を行ってきた。


by japanheart
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スマイル-スマイル その2

スマイル-スマイル その2

 ずっと前に書いたブログに、私が日本で小児外科の外科をやっていた頃、ガンの転移で失明して目が見えなくなってしまった子どもがいた。
 4歳か5歳か、そのくらいだったと思う。
普通の大人でもそんな風になったら、一体どれほど動揺するのだろうと思う。
この記憶を引っ張り出すといたたまれなくなるが、話を続けたい。
 この子どもがある日、突然病棟から消えた。
 病棟は上へ下への大騒ぎ。
 みんなでそこら中探した。

 数時間後だと思う。やがて、病棟の倉庫の片隅から、この子が出てきた。
 当時、私の上司は、本当に心配したのだろう。
 本気でこの子を怒鳴って怒った。
 私を含む多くの大人が、この光景を黙ってみていた。
 それが私の後悔。

 どうして、こう言えなかったのかと今でも思う。
「皆でずいぶん探したんだ。どこに隠れていたんだい?全然分からなかったよ。すごいね。」

 目が見えなくなった子どもが、ちょっと隠れんぼをしただけだった。
 毎日、暗闇の中で過ごすたった4歳か5歳の少年が、少しだけ冒険をしたのだ。
 みんなで、この小さなトム・ソーヤを囲んで楽しくいかなければならなかったのだ。

 この子はもうこの世にいない。
 そして私は今でも後悔している。

 この記憶が、スマイル・スマイル事業に反映されている。

 子どもたちの好きなところに行って、好きなことをさせてあげよう!

 大人が大人の価値で決めた場所や冒険ではなく、自分たちがしたい冒険の場所へ。

 がんと戦うたくさんの子どもたちが、これから冒険してゆくだろう。

 それを実現すれば、あの子は少しでも私たち大人を許してくれるだろうか?
 
by japanheart | 2011-09-02 13:24 | いのちの重み