スマイル-スマイル その2
2011年 09月 02日
ずっと前に書いたブログに、私が日本で小児外科の外科をやっていた頃、ガンの転移で失明して目が見えなくなってしまった子どもがいた。
4歳か5歳か、そのくらいだったと思う。
普通の大人でもそんな風になったら、一体どれほど動揺するのだろうと思う。
この記憶を引っ張り出すといたたまれなくなるが、話を続けたい。
この子どもがある日、突然病棟から消えた。
病棟は上へ下への大騒ぎ。
みんなでそこら中探した。
数時間後だと思う。やがて、病棟の倉庫の片隅から、この子が出てきた。
当時、私の上司は、本当に心配したのだろう。
本気でこの子を怒鳴って怒った。
私を含む多くの大人が、この光景を黙ってみていた。
それが私の後悔。
どうして、こう言えなかったのかと今でも思う。
「皆でずいぶん探したんだ。どこに隠れていたんだい?全然分からなかったよ。すごいね。」
目が見えなくなった子どもが、ちょっと隠れんぼをしただけだった。
毎日、暗闇の中で過ごすたった4歳か5歳の少年が、少しだけ冒険をしたのだ。
みんなで、この小さなトム・ソーヤを囲んで楽しくいかなければならなかったのだ。
この子はもうこの世にいない。
そして私は今でも後悔している。
この記憶が、スマイル・スマイル事業に反映されている。
子どもたちの好きなところに行って、好きなことをさせてあげよう!
大人が大人の価値で決めた場所や冒険ではなく、自分たちがしたい冒険の場所へ。
がんと戦うたくさんの子どもたちが、これから冒険してゆくだろう。
それを実現すれば、あの子は少しでも私たち大人を許してくれるだろうか?