子どもの心のケア―というけれど
2011年 05月 10日
今回の災害報道の中で、最近しきりに言われている子どもの”こころのケア”。
おそらく世間一般が認識しているいわゆる、PTSDやトラウマという用語に対しての理解が、しっかりしていないと大きく迷惑を被る子どもたちが出るに違いないと思っている。
しかもトラウマの処理というのはとても根気が要る作業であるということ。
いろいろな人が入れ替わり立ち替わり、中途半端な関わり方をすると反って症状を悪化される可能性も高いのだ。
でも、今回はやらねがならないのだろう。
実は、昨年、ジャパンハートが数年前のミャンマーの津波でトラウマを背負ってしまった子どもたちにケアをしようとしたとき、アドバイスを求めて専門家たちが共有するメーリングリストに、アドバイスを求めて情報を流した。
(実は、これが日本人医療チームが海外の外国人災害被害者に対してトラウマ処理をした初めてのことだった。)
そると、どうだろう。
多くの専門家が、それはやめたほうがいいというコメントを多くよこし始めた。
理由は、上記のごとく、中途半端な介入、継続支援の難しさ、専門家たちの交代などの理由を挙げてきたのだ。
しかし、一部の権威からの、そんなことを言っていたら何もできないからやったほうがいい、しかもジャパンハートはミャンマーでは地盤もあり、文化も慣習も知り尽くしているのだから、という書き込みがあってから、反対意見は鳴りをひそめ建設的意見が舞い込むように変わっていった。
今回の災害、いろいろな精神ケア―チームが、ころころ人を入れ替えながら入ってきている。
それって、本当に大丈夫なのかということになるし、中途半端ゆえ、深い介入ができないでいる。
だから心配している。
私たちは、気仙沼で、南三陸で、そして石巻で、繰り返し繰り返し、中心メンバーを固定し、深い介入をしてゆく。
治療的なトラウマケアとは、子どもたちと楽しい時間を過ごしたりするのとは少しニュアンスが異なるかもしれない。
簡単に言うと、悪いトラウマの記憶のイメージに新しく建設的なイメージを張り付ける作業だ。
脳のシナプスとシナプスを新しくつなぐ作業だともいえるかもしれない。
専門的なテクニックとリスク管理が要る作業だ。
小児科・精神科・臨床心理士などと共に、あくまでも医学的な観点から介入してゆきたい。