天と地の差
2011年 03月 31日
昔、小学校の頃、私の小学校では有名な音楽の先生がいた。
毎年、6年生は大型のレコードを作るのが習わしだった。
私たちが卒業した後、その先生は音楽大学の教授になってその小学校を出て行ってしまった。
その授業では、いろんな楽器を使って演奏を教えてもらった。
その中で思い出深いシーンがある。
ある子どもに何かの楽器の演奏をしている時、その先生が、生徒にその動きを止めて実際に弾き方を指導する。何人かがそばに近寄ってその説明を聞き、私たちが椅子に座ったまま遠くからその説明を聞いたいた。
その時、その先生は怒りながらこう言ったのだ。
「聞くだけで、知るだけで、それができるようになどならない!近寄って聞き、自分でも楽器を取って、やってみなさい!」
今回の災害援助もそうだ。
テレビで、新聞で絵を見て、それだけで本当の現状をしることはできない。
被災者を理解することはできない。
せめて近寄ってみて、実際に自分の目で見て、活動することがもっとも彼らを理解することになる。
医療者ならば、なおさらだろう。
実際のあなたの目で、破壊された町を見てみなければならない。
実際のあなたの皮膚で、風を感じなければならない。
あなたの鼻で、臭いをかいでみなければならない。
私は実際の現場を見て、裸眼でなければ感じることが難しい何かを、感じ取った。
わたし、あるいは、あなたとその時間、その場所の、組み合わせがそろったとき、何かを感じ、何かがこころに生まれる。
それらがあればこそ、今回の悲しいことがらから、未来を生み出す力が生まれる。
経験より尊いものなどあるのだろうか。
少なくともここに来たことで、私は今までと少しだけ違った音色が出せるようになったと思う。