特定非営利活動法人ジャパンハート ファウンダー・最高顧問。1995年より国際協力医療活動をはじめ、ミャンマー・カンボジアなどで、これまで1万人以上の子どもたちに手術を行ってきた。


by japanheart
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質という考え方

質という考え方

 他人の人生や生死に長く関わってくると、少しでも多くの人の境遇を何とかしたいと多くの人は思う。
 それは、当たり前のことで、それはそれでいい。
 
 人間、生きてなんぼ!ということだ。

 しかし、、、。

 多分、それに私が全面的に賛同していたら、私が目指す”たとえ死んでもこころ救われる医療”という概念は,生まれなかったろう。

 私は、一人でも多くの人を救おうと活動をしている人間から見れば、まあ、あまり歓迎されることはない存在だ。
 必ず否定的な意見を、どこかしこで言われている。

 実は私、昔この活動をはじめた16年前、押し寄せる患者たちにたった一人の医者として立ち向かった。
 少しでも多くの人のために!とこころと体にむち打った。
 本当に過労死するかと思った。ちょうど、30歳の頃。今なら死んでいると思う。
 朝の5時から働き、夜は12時まで毎日働いた。
 そしてわずかな睡眠時間も、上手くいかない患者たちの治療の夢を見ている。
 それはそれで幸せだったかもしれない。

 でもあるとき、こう思ったのだ。

 ”私って,本当に幸せ?”
 ”これが私が本当にしたかった在り方?”

 そして長く考え続けた。
 答えは”NO”だった。

 数量の概念に,支配された私の人生は、あまり幸せを感じていなかった。
 そこで重大なことに気づく。
 こんなに多くの人に、少しでも幸せを振りまいているのに、自分の人生がなぜか痩せている。
 本当は私は、私が幸せになりたくてこうしているはずなのに、私のこころはあまり幸せだと思っていない。

 私にとってもっとも大切にしなくてはならない,かけがえのない、たったひとつのもの。
 ”私の人生”

 それが、ないがしろになっていた。

 誰よりも,現地の人のために働いていた。
 多分、誰よりも。
 けれど、思ったより幸せにはなれなかった。

 そして、再び考え続け、ある結論に達する。
 どうして、幸せになれなかったのか。
 、、、ただ数におぼれ、患者の人生の質に、踏み込めずにいたから。

 他人の人生の質を無視することは,自分の人生の質をないがしろにしていることなのだと気づいた。

 それから、数量よりも、質をいつも意識してここまで来た。
 
 当たり前だが、質という限りは、どう考え、どのような態度で、こころで,技術で患者に相対するかということが、自分の人生には大切になる。
 ただ、数を助ければいいというなら、こんな活動はしていない。
 知り合いの優秀なマラリアの専門家の先生にお金を全部預けて,一人でも多くの人を助けてもらう。

 ただ、それでは自分の人生が痩せるのだ。
 そして痩せれば痩せるほど、たったひとつの大切な自分の人生が豊かさを失うのだ。

 一人でも多くの人を救うことが、何にもまして大切だと思う人間はそうすればいい。
 別に、それを否定はしない。
 ただ一緒には仕事をしないだけだ。

 今日本も、30兆円を越える予算を医療に使っている。
 その中で,果たしていくらが人命に関わることに使われているだろうか?
 
 自分の国でも、多くは直接、人命に左右する医療に使っているかどうか怪しいのに、海外だからといって,人命至上主義は、私には納得できない。
 風邪程度で、病院にかかるのはやめましょう。
 骨折は,死ぬ病気ではありません。
 生まれつき顔の変形があっても大丈夫ですよね。
 皆さん、なるべく生死に関わる人にお金を使いますから、どうかそうでない人は医療を受けるのは,ご遠慮ください。などなどと。
 
 いったい、誰か言ったやつはいるか?

 人にはそれぞれに自分の人生を最も大切にする権利がある。
 だから、風邪でも,骨折でも,変形でも、医療を受けることを非難されたりする必要はない。

 海外医療だけに、なぜ人命至上主義が,はびこるのか?

 私は30歳の頃、自分のいのちを賭けて、挑み、そして自分の人生の質と患者たちのいのちや人生の着地点を見つけた。
 だから、せめて多くの人には、安全な場所にいて、裕福に守られる環境からの発想ではなく、そのくらいの人生を賭けた挑戦から得た知恵の言葉や思いを聞かせてもらいたい。

 私にはできたから、誰でもできると思う。
 やるかやらないかだけ。

 修行もしないで、本ばかり読んでいる僧侶のことを信用するか?
 実際に厳しいトレーニングもせず、知識だけたくさんあって、現場で活躍もできないアスリートのアドバイスを聞くか?
 お金だけ動かし、システムをいじっても、いっこうに国民を豊かにできない政治家の言うことを信用するか?

 
 
 


 
 
Commented by 松本奈津子 at 2010-07-07 04:51 x
おはようございます。
私の今の病室の人達は、みなさん癌です。昨日、隣にいた患者さんが急遽退院されました。まだ体調も良くなられていないのに、次の人の入院があるからと凄く無理矢理でした。そんな事があっていいのか凄く疑問に思いました。
今の日本の医療はそうなのか?
と思うと凄く悲しくなってしまいました。患者さんは、不安で不安で仕方がなかったと思います。
将来はその様なたくさんの人の心を少しでも、安心していられるような医療を届けたいです。
by japanheart | 2010-07-07 03:03 | 医者の本音 | Comments(1)