特定非営利活動法人ジャパンハート ファウンダー・最高顧問。1995年より国際協力医療活動をはじめ、ミャンマー・カンボジアなどで、これまで1万人以上の子どもたちに手術を行ってきた。


by japanheart
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”しんがり”をかってでる

”しんがり”をかってでる

 負け戦の時、その軍団の大将をを逃すため、命を捨て敵を最後尾に残り、食い止める。
 その多くは、死を余儀なくされる。そのため、もっとも勇気と度胸と忠誠心がある者がその役目を担う。
 その役目を、殿(しんがり)という。

 この時期、多くの機能が停止する東南アジアの仏教国の国々。多くの患者たちは、村でその時期を過ごすことを望み、無理を押して帰って行く。
 ジャパンハートの活動もまた、この時期、やはり2週間ほどの休息に入る。

 患者を残しながら、すこしずつ4月に入ると撤収が進められてゆく。
 患者たちが水祭りが近づくにつれて猛烈な勢いで、帰路につく。

 目標は、全員退院、全員帰郷。

 最後までかなりきびしい患者もいるが、患者家族そして医療スタッフがその目標に向かって努力する。

 ジャパンハートのしんがりはたいていの場合、看護師になる。
 患者の傷を、治療し、最終決断を下す。

 もし患者の状態が退院を許さなければ、たった一人、異国の地に取り残される。

 数日間、患者を診て、自分で食事も水も用意し、残らなければならない。
 せっかく用意した帰国のための航空券も、紙くずに変わる。

 自分の責任で、それをやってのけなければならない。

 しかしながら、ジャパンハートには自分からそのしんがりをかってでる人が、必ずいる。

 彼らは命をかけはしないが、たぶん彼らの人生観や使命感、職業観という、意識がそれにかかっている。

 しんがりをかってでれる人は、本当にプロになれる可能性はある。

 人生はいつも、やるかやらないかの選択を繰り返す。
 そしていつもやると選択するのは、面倒なことだ。
 しかし、それを繰り返すうちに、いつしか自分を取り巻く世界が変わっていることに気づく。

 10年前、私が見ていた景色は今はない。
 おなじ場所に立ち、同じ景色を見ていても、すっかり違う景色を見ている。

 同じ医者という職業をし、同じ病気の患者や家族と接していても全く違う世界にいる。
 その世界は10年前より、遙かに美しい世界だと、認識できている。
 
by japanheart | 2010-04-13 23:53 | 活動記録