特定非営利活動法人ジャパンハート ファウンダー・最高顧問。1995年より国際協力医療活動をはじめ、ミャンマー・カンボジアなどで、これまで1万人以上の子どもたちに手術を行ってきた。


by japanheart
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リスクを見極める

リスクを見極める

 こんな状況のなかの医療活動だから、いつも診断機器より、自分の経験と感性を信じている。

 昨日、ヘルニアの陥頓(腸などが体の穴ーたとえば筋肉や筋膜などでできた穴ーの間にはまり込むこと)で5日間もたってからやってきた1歳の子どもを緊急で手術した。
 手術が上手くいった。
が今日、39度から40度の熱が続く。

 腸が破れているのか?
 お腹の中へ戻した腸が腐っているのか?

 もし破れたり、腐っていたら今日明日にも命が危なくなる。
 もう少し様子を見るか?
 早めに手術をして確かめ、いざとなったら腸を切り取るか?

 子どもは体力的に余裕は無い。
 
 私たちにその状態を確かめることができる機器も無い。
 命のリスクを犯して様子を見るか?
 ?どうする?
 心は、少し重たい現実に腰が引けている。

 しかし、今から緊急で開腹手術をしよう。
 こういうところでは、少し遅れるとそれが命取りになる。

 腐っているのか、そうでないのか。
 破れているのか、そうでないのか。

 私のエネルギーを点に凝集するように、一気にお腹を開け、腸を調べた。
 腐ってはいない。
 破れてもいない。
 
 子どもは大丈夫だ。
 すぐにお腹を閉じる

 開腹からわずか15分、閉腹。
 局所麻酔と最小量の血管麻酔。
 子どもは、お母さんを目で探している。

 多分、感染による熱か?
 抗生剤でこれから攻める。

 2週間後、この子どもが元気に帰る姿を想像する。
by japanheart | 2009-07-22 03:14 | 活動記録